クリニックにおいては病院と異なってタスクシフティングを徹底する必要性があります。在宅クリニックではどのようなタスクシフティングが考えられるか、説明しました。「忙しくなってきてから考えればいいだろう」ではなく、職員の採用に影響を与えることなので、立ち上げ時点から考えておくべき課題です。
以下、書き起こしです。
今回は、在宅クリニック内でのタスクシフティングのお話をしたいと思います。
タスクシフティングというのは、基本的に資格がある人がやっている、本来は資格なくてもできる仕事を、他のスタッフにサポートしてもらいましょう、というお話です。
今回の動画内ではそういった定義でお話をしたいと思います。
在宅のクリニックの中でどういう資格を持っている、あるいは持っていない人がいるかと言うと、今回の図表には四つの階層に分けて表現をしました。
上から、医療の知識が多い人から少ない人まで並べています。
最も多いはずの人が医師です。医師にタスクシフティングをするということは、医師より上位の資格はありませんので、それは考えないということです。
基本的に医師から看護師、看護師から医療事務、医療事務からドライバー方向へのタスクシフトということになります。
上から順に、医師、看護師、医療事務・相談員、ドライバーという四階層に分けて表現をしました。
それぞれの職種についてお話をしていきたいと思います。
まず看護師に対してタスクシフトをするとしたら、医師の診療の補助が通常の業務、それから電話受けが通常の業務なわけです。それをさらにもう少し加えて、クリニックによっては普通の訪問診療の基本パターンとしては、医師と看護師の二人組をドライバーが患者の所に届けるという三人体制が、多くのクリニックがとっている診療の仕組みです。場合によっては例えば患者の家が結構遠かったり、地方で、あるいはその患者がきちんと自分の体の状態を表現できないような人だった場合に、まず医師を連れて行くのではなくて、看護師とドライバーだけ、あるいは看護師が自動車運転して患者のところに行って、情報を集めてきてクリニックに電話もしくは帰ってきて医師に報告するなりして、情報をクリニックに持って帰るクリニックがあります。
特に地方では、こういう運用されていることがあります。
必ずしも患者の状態を確認しに行くのに、医師が必ず行く必要はなく、看護師が確認だけであれば行っていいわけです。
看護師を派遣することで診察料は当然とってはいけませんけれども、このような患者さんの管理という面では、看護師ができることって実は多いわけなんです。
普通の病院でも、慢性期の病院でナースコールが呼ばれたら医師ではなくて看護師が行きます。それと同じことです。
あまり難しいことを考える必要ないと思います。
それから、電話受けについてですけれども、患者さんからかかってきた医療に関する内容について、全て医師が答える必要ないわけです。
内容によっては、医師が既にカルテに記載したことを患者が理解していなかった場合などにおいては、看護師がカルテ内容をもう1回お伝えするということで事が済む場合も結構多いです。
医療事務の方だとやはりこれは少しできませんが、カルテの記載内容を理解して解釈して伝達するというところまでは看護師ができることです。
タスクシフトでこういうことができるように教育をする、仕組みづくりをやっていくということが大事になってきます。医師の負担を減らすためにです。
次に、医療事務の方、それから相談員の方がタスクシフトで行けるところはどこまでかと言うと、例えばその施設往診とか、診療の補助です。看護師だけでは足りない場合がありますので、看護助手さんのような働き方をしてもらうことも出来ますし、あるいは医師が書く書類の下書きもできます。
ただその下書きに医師のハンコまで勝手についてしまったらまずいと思いますけれども、その下書きまで出来ると思います。
それから看護師がその診療の補助行為に従事してる間の電話を受けなども、事務員さんはできるだろうと思います。携帯電話であれば、その電話も出先で受けてもらうこともできると思います。
通常の業務としてその医療事務さんは、基本的に内勤だと思いますけれども、診療について行って助けてもらうということもできるでしょうし、その助けに来てもらってるその脇で、医師と看護師の手がふさがってれば電話を取ってもらうこともできるということです。
それから最後にドライバーさんです。
これは聞いて驚かれる先生方もいらっしゃるかもしれませんけども、結構訪問診療の分野では有名なクリニックなどでも、ドライバーさんが事務的なことをしっかり理解されていて、電話受けをされてるようなクリニックもあります。
きちんとドライバーさんを鍛えれば、こういったことができるようになります。
医療事務さんとか看護師さんに比べると、その患者さんから聞き取れる内容というのは制限されてきますので、聞き取ったらすぐに医療職に話を繋いでもらう必要はありますけども、しかし電話というのは受けている人の時間を取るものですので、日本語の表現のブレとかで結構時間のかかるコミュニケーションですので、予め患者さんの言いたいことだけでも聞き取って、電子カルテとか、あるいは職員のコミュニケーションツールにメモとして貼り付けてもらえるだけで、だいぶ電話を受ける医療職の手間が減らせるということがあります。ですので、ドライバーさんに少し医療的な用語をきちんと覚えてもらって、電話を受けをしてもらう、メッセンジャーとしての役割を果たしてもらうというのも、一つの手であると思います。
あるいは書類のFAX送信とかコピーとかを手伝ってもらうというのも、容易に考えうることだと思います。
ドライバーさんというのは基本的に運転をする人として雇うわけですが、運転で患者さんのところに医療職を届けたら基本的に暇になってるわけですから、ドライバーさんを活用させるのは、クリニックの経営に大きく関わってくるだろうと思います。
それから最後に申し上げておきたいのですけれども、タスクを情報シフトしようと計画している職種については、若めの人、少なくとも40代、歳がいっても50代前半の人を雇ってくる必要があります。
はやり歳が結構上の方ですと、新しい仕事や新しい単語を覚えてもらうということは、大変厳しくなってきますので、もしドライバーさんにメッセンジャーやってもらおうとか、医療事務さんに書類の下書きとか電話受けを柔軟に対応してもらえる人、あるいは診療の補助行為、看護助手さん的なことを覚えてもらおうと思っているのであれば、できるだけ若めの人を雇っておくことをお勧めしたいと思います。
なかなか中小企業とはいえども、人を一回雇ってしまったら、その人変えるというのは資金繰り的に難しいことになりますので、最初からタスクシフトをやっていくことを計画しているのであれば、というよりタスクシフトは計画しないといけないと、私は思いますけれども、計画しているのであれば、若めで可塑性のある人材を計画的に採用しておくことをお勧めしたいと思います。
以上です。