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貧困ビジネスについて【在宅医療】

在宅医療では、患者さんが経済的なトラブルに陥っている現場によく遭遇します。どのようなケースがよく目につくか、お話ししました。

以下、書き起こしです。

こんにちは。

今日ちょっとマニアックなお話なんですけれども、訪問診療でよくいらっしゃる社会派の患者さん、ソーシャルな問題を抱えてらっしゃる患者さん、特に中でもお金がない患者さんがはまっている罠、ということでお話をしたいと思います。

なんでこんな話をしてるかというと、訪問診療で診る患者さんは、特に福祉のお世話になってる方が多くて、そういった方々が福祉の世話になる原因としては、やはり貧困が主たる原因であることが多いわけです。

貧困が原因、あるいは人間関係が原因で貧困になっている、貧困が原因で人間関係にトラブルを抱えている、両方ありえますけれども、お金がないということが貧しさと密接に関わっているということは、想像に難くないわけであります。

診療の途中に、ケアマネさんとかが、そういった患者さんと話をしたり、患者さんのこと調べてはいらっしゃるんですけれども、なかなか患者さんはケアマネさんには素性を明らかにしないことが多いんです。

しかし医師が白衣を着てお宅の中に入っていくと、本当のことを話してくれたり、実際の生活の場を見せてくれたりすることが結構あります。

ですので医師ならではの情報収集ができるというポイントもありますので、是非訪問診療の際に情報収集を行って、必要があればケアマネさんなどに情報を共有するということが必要になってくると思います。

それが意外とソーシャルの問題を解決する糸口になったりするので、非常に重要なことではないかな、という風に思っています。

さて、患者さんからお金がむしられてしまうメカニズムが世の中には色々と存在していまして、まず一つ目はいわゆる貧困ビジネスの類です。

高利貸し、サラ金とまでは言いませんけれども、サラ金よりもちょっと悪い金貸しから借金をしておられる方がいらっしゃったり、いわゆるニセ医療、健康食品とか薬と語って、価格が高くて原価の安いサプリメントのようなものを売りつけるということにはまっていらっしゃるかと思います。

それから一部の新興宗教です。ちょっと怪しい宗教があります。こういったところにお布施というか献金というか、お金をむしられている場合もありますし、あるいは高いものを買わされていることもあります。

怪しい新興宗教の悪いところは時間を取られることではないかなという風に思っていて、例えばこの時間を取られるって事が、介護者の時間を取っている場合に、ネグレクトにつながっているというケースもよくあります。
ですのでちょっとこの辺は注意して見ていくと良いかと思います。

その宗教の活動に熱心になりすぎていて、ご家族の介護や看病がおろそかになっていらっしゃる方が結構いらっしゃいます。

貧困ビジネスの最後として、やはりマルチ商法です。

健康食品なんかもここに含まれる事ありますけれども、ちょっと怪しい健康器具とか、絵画が売られてることなどもあります。

こういったものにはちょっと気を付けて行くと良いかな、という風に思います。
こういう物品がお家の中にないかを、見える範囲で見てください。

貧困ビジネス以外で問題があるとしたら、家庭内の問題です。ご家族の問題です。

ご家族が患者さんの年金にパラサイトしていたり、それからご家族が患者さんの財産を無駄遣いしている、食いつぶしているようなこともあって、ひどい時には患者さんの名前で借金をしてるような場合もあります。

年金にパラサイトしてる場合などは、ご本人が望んでいる医療とご家族が望む医療が乖離することがあります。

つまり、ご本人は最後まで自然の経過で安らかに逝きたい、という風に言ってるにも関わらず、ご家族がちょっと無理な過剰な延命治療を要求してくる、ということがあるのがこのパラサイトの問題です。

この二つの患者さんからお金をむしり取る罠に対して、医療者の側としてはっきり言って打てる手は全くありませんけども、患者さんが社会的に困ってる理由が診療中に垣間見えることがあります。

こういった社会的な脆弱性を抱えてらっしゃる患者さんは、患者さんの病状が一段と悪化したり体調が変わったりすると、家計が一気に崩れてしまうようなことがありますので、日頃からケアマネさんとお金の面についてもきちんとお話をしておく必要があるだろうと思います。

ちょっと今回は医療とはかけ離れたお話になってしまいましたけれども、在宅の医療やるにあたっては、このソーシャルの問題というのは避けて通れない問題ですので、何らかのご参考になれば幸いです。