先に公開した動画で、都市部近郊の在宅クリニックでは看護師を中心とした運営がやりやすく、地方都市の在宅クリニックでは事務系職員中心の運営がやりやすい状況にあることをご説明しました。
しかし、これは都市部のクリニックにおける事務員、地方の看護師がクリニック内で遊んでいていいという意味ではありません。これらの方々はクリニック内で何をすべきか、また少数派となっているこれらの方々にどのようなサポートが検討されるべきかをお話ししました。
今後とも俯瞰的な立場、特に医師としての立場から、情報発信を続けていければと思います。
以下、書き起こしです。
裏医局長の在宅チャンネルです。
今日は以前にご説明をした、都市部と地方における在宅クリニックで中心にするべき職種の違いという動画の、補足の音声を録りたいと思っています。
上記の動画では、都市部では優秀な看護師を雇いやすく、地方では優秀な事務員を雇いやすいという説明をしました。
この動画を見て「都市部の事務員さんはサボってて良いんでしょ?」「地方の看護師さんは、ただお茶を啜っていれば良いんでしょ?」という風に解釈をされると困ると思い、この補足の動画を録らせて頂いています。
地方の看護師さんは何をすべきかと言いますと、事務員さんを優秀な職員に育てていく必要があります。そのためただ座っていればいいだけではなく、事務員さんの教育者として働いていただく必要があります。
事務員さんに、医療のドメインの知識をきちんとインプットするという必要がある為、正しい様々な情報の解釈や手技の意味・医師のサポートの仕方等といったことを、看護師さんが事務員さんに教育をすることが地方のクリニックのサービスの質・サービスの継続性の担保の大事な基礎になると思います。これが地方の看護師さんの役割です。
もう一方の都市部の事務員さんも、当然サボってていいわけではありません。基本的には医療職が苦手とする部分のサポートと、そのプロフェッショナルとなっていただくことが都市部の事務員さんに求められていることではないかと私は思います。
具体的には、医療職は医学的判断や手技といったことに専念したいという傾向がありますので、例えば傾聴や福祉(市役所の職員や区役所の職員さんになったつもりで)、ケアマネージャーの補完を行うといったような業務。それから維持(お金の計算など)といったことに関して、都市部の事務員さんはプロフェッショナルになっていただく必要があると思います。
今後の展望
地方の看護師さんと都市部の事務員さんがどういったことをすべきかということに加えて、今後の在宅クリニックにおける展開・展望を少しだけお話をしておきます。
都市部の看護師さん(地方の看護師さんもそうですが)は、できる看護師さんがいっぱい集まってきますが、だんだんギスギスしてきたり、ベテラン看護師さんのステップアップの場所がなくなってくることもあります。そのため例えば、看護師さんにも少し維持や福祉に関してきちんと勉強してもらう(事務員さんが疲弊しているのが都市部の在宅クリニックで多い光景ですので)ことが良いと思います。
こういったことが分かってる看護師さんは、ゆくゆくは訪看ステーションなどを開業できますので、そういったモチベーションを持って事務のカバーをしっかり頑張ってもらうという事が一つ、今後の在宅クリニックの組織運営において求められることではないかと思います。
もう一つは、今後の展望として在宅クリニックはテレワークをもっと積極的に活用していくべきだろうと思っています。
往診中に看護師さんが、緊急の患者さんからの呼び出し用の電話を持っていたりすると、手技中や診察中に電話がかかってきて、非常に診療との両立が難しいところがあります。そのためコールセンターを設置したり、電話が忙しくなってきたらクリニックにきちんと電話番の人を置くべきではないかと私は思っています。
テレワークなど、子育て中の方や時短勤務ならオッケーだよという方を、電話がたくさんかかってくる時間帯に受けていただくように契約をするとか。
一つだけ知っている事例で、ある看護師さんが旦那さんの転勤で別の地方に行くことになったけれども、専門的な在宅医療に関する知識がしっかりあるので、電話番をリモート(旦那さんの転勤先)で、一週間のうちのある時間帯だけ行う契約をしてるという話もあります。
またすごく遠隔の地方、沖縄とか(昔から沖縄はコールセンター業務が有名ですが)に夜間の患者さんからの緊急電話のコールセンターをおいているような法人もあったりします。
そういったテレワーク・リモートワークとか時短などを利用して、電話番を医療職から分けるのも一つの重要なポイントではないかと思っています。
今回は、都市部と地方の人材の活用の仕方の違いの補足の動画として、この動画を作成しました。
今後とも在宅チャンネルをよろしくお願いします