訪問診療・往診では、医師を含め医療者が移動のために車に長時間乗る、という他に類をみないことが行われています。一日のうち多くの時間を過ごすことになる車内の環境整備は、常勤の職員にとどまらず、非常勤の医師の採用にも影響のある重要事項です。
以下、書き起こしです。
今日は、往診で使う車、往診車への投資は大事ですよ、という話をしたいと思います。
大きく分けて、三つの観点からお話をしたいと思います。
①作業効率
まず一つ目が作業効率の観点です。
在宅医療では、作業を移動しながら行うことが、非常に時間の使い方という観点から大事になってきます。
車の中でどういった作業を行ってるかと言うと、まず一番医師が多いのが、カルテ記載です。カルテの閲覧と記載。
それからこれは、主に看護師になってくると思いますけれども、電話受けです。
患者さんからの往診の依頼や、事務的な問い合わせなど、電話を受ける必要がありますので、そういったことを車で行うことが多いです。
この作業効率を上げるために、車はどんなものを選ぶべきか。
スライドに書きましたけれども、居住性、静音性、それから交通量の多いエリアでは、路肩に駐車など、もしかしたら電話かかってきた時にできないということがあれば、ドライバーさんを雇う、ということも一つ考える余地があると思います。
また居住性ですけれども、やはりこれは、なんといっても広さです。
基本的には、やはり普通車がいいのではないかな、と思います。
それから電話を受けて、お話をするということがありますので、雑音が入らないような静音性です。
これが作業効率という観点から、非常に重要になってきます。
あと人によっては、ニオイを気にされる方も結構いらっしゃって、車のニオイ対策です。
特に、トラブルが起きやすいのは、ドライバーさんが喫煙者だった場合など、タバコの匂いは吸ってない人にとっては、やはり些細なことでも気になりますので、これに対するクレームというのは、いろんなクリニックで聞くことがあります。院長先生は特にドライバーさんの喫煙問題については、きちんと管理をされた方が宜しいかと思います。
②労働衛生
そして二番目の観点は、働く人の労働衛生に関する対策です。
それは、腰痛対策です。車のクッション性がなかったり、軽自動車みたいな車の幅ですね、タイヤとタイヤの幅が狭いような車では、腰痛がやはり起きやすいです。
全然安いのだから軽自動車でいいよということを言って、車への投資を何も考えずに決めてしまったクリニックで、軽自動車ばっかりで営業してるところだと、院長先生が往診に行く時の揺れで腰を痛めてしまって、往診が非常にきつくなってるというクリニックを見たことがあります。
ですから、一日数時間も車に乗ってるという、ある意味で異常な働き方をしてるわけですので、この腰痛対策ということ、車の乗り心地ということに関してあまりバカにせずに、きちんと重要なこととして認識をしたほうがいいです。
車幅も繰り返しになりますけれども、軽自動車というよりは普通車。普通車の中でもランクが上がれば基本的に車の幅が広がってきますので、その道路事情などと合わせて、どの程度車の幅を広げられるかということについて真剣に考えるべきです。
それからできれば、座席のクッション性があればいいかなと思います。車の備え付けの座席でもいいですし、あとからクッション付けるでもいいですので、何らかの腰痛対策をやっていく必要があると思います。
③車酔い対策
三番目は、意外と見落とされがちで、非常勤の先生を採用される時に聞いてくることなんです。
在宅のクリニックを始めようとされる先生方というのは、基本的に車に乗るのが好きだったり、特にあの長時間の車での移動が苦痛じゃないから、在宅の事業を始められるわけなんですけれども、意外と医師や一般の方の中でもそうだとは思うんですが、看護師もそうだとは思うんですけれども、車酔いされる方というのが、一定の割合でいらっしゃって、これが車の選び方とか運転技能などによってきちんと対策を講じていないと、非常勤を雇ったのにポロポロやめてしまうということがしばしば見られます。
車酔いで先生が辞められたという話を、もうすでに十件以上、ここ数年いろんなクリニックを回っただけで話を聞いています。
車酔い対策ですけれども、どんなに丁寧に運転をしてもすぐに酔っちゃうような人は、やはり在宅医療はやらないほうがいいと思うんですけれども、ある程度までの人はキチンと働けるような対策を取ってあげる必要があると思います。
そうしないと、せっかく雇った非常勤の先生を雇う時の雇用コストが無駄になってしまいますので、きちんと対応を取っていく必要があると思います。
どういう対応が取れるかというと、やはり車です。
一番と二番で述べたような作業効率が上がったり、腰痛対策です。車の幅がきちんと広い車であれば、やはり車酔いはしづらいですし、フロントガラスが非常に大きくて、大型車で遠くをきちんと見渡せるような車であれば、車酔いというのは減ってきますので、車種の検討に際しては、車酔いに関する考慮も必要だと思います。
それからこれはドライバーに依頼すべきことだと思いますけれども、運転は住宅地の中のくねくねした道路を、ショートカットとして使いまくるのではなくて、幹線道路を中心にハンドルの操作が安定した経路を選択して、運転する人に教育を徹底する必要があると思います。
そもそも、急ブレーキ急発進しないような運転技能、曲がる時カーブハンドルを切っている時に、加速をするとか、その重力を感じるような下手くそな運転をしないように、ドライバーに教育をしていく必要があると思います。
今回は往診で使う車、往診車への投資は大事だというお話をしました。
意外と、往診車に関する投資というのは、クリニックさん軽視されていることが多いんですけれども、職員の作業効率とか労災対策、それから採用に関してもあの車の選び方が響いてくるということをご理解いただいた上で車を選んでいただけると幸いです。